百もの、語り。
39.見返り美人
すごく、綺麗な人を見たんです。
その人の後ろをついつい、
つけていってしまったんです。
フラフラと、
まるで花に寄せられる虫みたいに。
それで一駅分ほどの距離を歩いた時でしょうか。
突然、男の人に声をかけられたんです。
「あいつの後ろつけて、何してるんだ」
そう言われました。
あ、この人、彼氏か何かかなって
そう思いました。
それで謝ったんですけど、
そしたら彼は、「よかった」って
何故かホッとしていたんですね。
その後に聞かれたんですよ。
「あいつの顔見たか?」って。
そういえば、見てないな。
だって、顔が思い出せないんですもん。