君ハ空ノ上
「波留…」


「あ…鈴…」

鈴は目元にハンカチを当てていた。

目が腫れている。


相変わらず木魚はなりっぱなし。

「波留…尚輝君…尚輝君が…!!」


「鈴、それ以上は言わないで…」


無意識に、涙が静かに頬を伝う。

わかってる。


尚輝はいなくなってしまった。


ちゃんとわかってる


……はずなのに、一向に私の足は動かなくて、棺の中の尚輝を見ようとしない。


受け入れることを体が拒否してるんだ。


受け入れることに心が悲鳴をあげているんだ。

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