チャリパイ14~最後のサムライ!
「ロース!!」
痩せ衰え、無精髭を生やしていても、イベリコがその顔を見謝るはずが無かった。
処刑されたと聞かされていたロースが、実はまだ生きていたのだった。
「この宮殿の地下に罪人収容の為の独房があるのをご存知でしたか?
この映像は、現在の地下収容所の映像です」
「ロースが……ロースが生きていた…………」
イベリコの瞳からは自然と涙が溢れだした。
もう二度とその姿を見る事は無いと思っていた最愛のロースが、画面越しであるとはいえ確認出来たのだ。
「……イベリコ……その声はイベリコか…………」
と、ブタフィの携帯電話から映像と共に音声が流れてきた。その声はまさしくロースの声であった。
「そうよ!イベリコよ!
生きていたのねロース!」
画面に向かって必死に話しかけるイベリコに、ロースも答える。
「ああ……だけど済まないイベリコ……オレはイベリコを護ってやらなければならないのに……」
「何を言ってるのよ!ロースが生きているだけで私は……私は……」
感極まって言葉に詰まるイベリコ。
そんなイベリコの様子を見て、ブタフィは自分の立てた策略の成功をほぼ確信したように顔を綻ばせた。
「イベリコ姫、感動の再会はそれ位にして、ここからは取引の話をしましょう」
言うまでもなく、ブタフィがイベリコとロースを引き逢わせたのは、なにもイベリコを喜ばせる為では無い。
「あの男ロースの生命与奪権は今、この私が握っている。しかし、もしも姫がこの婚姻同意書に署名をし私と結婚するというのなら、ロースを無罪放免とし釈放しましょう。さもなければ、あの男は生きている価値が無い!彼がどのようになるのかは、貴女でも解るでしょう」
ブタフィの言う取引とは、ロースの命とイベリコの結婚とを天秤に掛けるものであった。
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