チャリパイ14~最後のサムライ!
「なんて卑怯なマネを!」
「なんとでも言うがいい!もう、貴女が私を嫌いだろうが、そんな事はどうでもいい!あの男を助けたければ同意書にサインするんだ!」
ブタフィの理不尽な要求に、怒りで肩を震わせるイベリコ。
しかし、署名を拒否すれば最愛の恋人ロースの命は無い……
「イベリコ!署名なんかするなっ!
オレは死んだって構わない!
だから、そんな奴の言う事に従うんじゃない!」
携帯電話の向こうでは、自らの命を犠牲にしてもイベリコを護ろうと、ロースが声を限りに叫んでいた。
けれども、そんなロースの叫びはイベリコにとって余計にロースの事をいとおしくさせるだけであった。
「ブタフィ将軍……その携帯電話の電源を切って下さい……」
瞳を伏せたまま、イベリコはブタフィに静かにそう告げた。
せめて、ブタフィとの婚姻の同意書に署名するところだけはロースに見せたくは無かったのだ。
「仰せのとおりに」
不敵な笑みを浮かべたまま、ブタフィは言う通りに携帯電話の電源を切った。
ブタフィとの婚姻が成立すれば、ブタフィは直ぐにでも王室内の制圧に動き出すであろう。
そして、ブタフィ将軍は名実共にブタリアの国王となり、この国の恐怖政治はより酷いものとなっていくに違いない。
しかし、それでもなおイベリコには今、目の前の命を見殺しにする事はどうしても出来なかった。
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