チャリパイ14~最後のサムライ!



「………乗ってないね」


「…って事は、まだ事務所にいるって事ね……」


『フォーメーションA』から地下のガレージに集合し、シチローの車で事務所を脱出する段取りは、チャリパイのメンバーであれば誰でも心得ている事項である。


それなのに、子豚が車に乗っていないというのは一体なぜなのだろう?……



その頃、森永探偵事務所では……


窓ガラスが割られた為に、事務所の中に充満していた煙はわずかに収まり、うっすらと視界が確保出来るようになっていた。


車が走り去った事務所の外を眺め、悔しそうに舌打ちをする親衛隊のリーダー。


「逃げられたか……奴ら、暫くは戻ってくるまい。こうなってしまったら、姫を捜すのはかなり厄介だぞ……クソッ!」



ところが、次の瞬間



「隊長~!イベリコ姫を確保しました!」


「なにっ!」


部下の報告に、リーダーは驚いた顔で慌てて駆け寄る。


「イベリコ姫!さっきの奴らと逃げたのではなかったんですか!どうしてここに!」


「だって、スキヤキよ?冷めたら美味しくないでしょ!」


リーダーの目の前にいたのは、脱出よりスキヤキを選んだ子豚の姿であった。


しかし、親衛隊はイベリコと瓜二つの日本人が存在するという事実をまだ知らない。


『どっちが子豚ちゃんでしょう?』ゲームでイベリコと服を交換していた子豚を、イベリコ姫と思い込んでしまうのも無理のない事であった。



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