甘い笑顔のキミ
しばらくして、強く抱きしめられていた体が自由になった。


「…ありがと、藤崎。」

顔を上げると、そこには穏やかな表情の田中くんがいて。

「…うん。」

自然と私も微笑んだ。


「これで吹っ切れた。すぐには無理だけど…藤崎のこと、応援するから。」

「え…?」

「相川のことだよ。振られたからには、せめて相手には幸せになってほしいじゃん?」


笑いながら言う田中くんを見て、
改めて田中くんの人のよさが身にしみる。

「…ありがとう。」


笑顔で返すと、田中くんは満足そうに明るく笑った。


「…それじゃ俺、帰るな。もうすぐ藤崎の想い人がくる時間だし?」


パッと時計を見ると、5時半を少し過ぎたころだった。

「本当だ……って、え?」


ふと疑問が浮かび、再び田中くんを見る。



「…なんで、相川くんが放課後来ること知ってるの?」




< 64 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop