ゆびきり
「部屋もどらないの?」
トオは何もなかったような顔をしていた。

「トイレいく…」

「そっかぁ。じゃあ俺先に部屋行ってる」

トオはゆっくり階段を登って行った。



非常口のドアをしばらく見つめたけど、マリちゃんが出てくる様子はなかった。


部屋に戻ってもマリちゃんが戻ることはなかった。


トオも何も言わない。
僕も何も聞かない。



帰りぎわ

「今度の夏休みたっくんの実家行っていいかな?」

「え…いいけど…」

「藍ちゃん見てみたい」

トオは笑顔で言った。

その笑顔がさっきマリちゃんに見せていた笑顔と重なって見えて

「じゃあダメ…」

と答えてしまった。



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