ゆびきり
「あの…お2人でいらしてるんですか?」


上目づかいで、胸元が強調された服に身を包んだ3人の女に囲まれた。


「2人以上にみえるなら病院いきなよ。俺たち医者じゃないし…それに今大事な話してるからさ。」

トオが、笑顔でサラッと言った。

「やだぁ~2人に見えますよ~。お医者さんじゃなかったら何してるんですかぁ?」

トオの笑顔を良い意味で受け取り、全く引き上げる様子はない。

2人カウンターでのんびりしていた僕とトオは、またいつものか…と少し気怠さをも感じていた。

「まただよ。」

トオは、ため息を混じらせながら小声で言うと、静かに席を立つ。

女の子たちは、少し期待してか表情がゆるんだ。
そして、1人が何か言おうとした時、トオはカウンターにまた向き直して
「マスター。彼女たちここに座りたいみたいだから、俺たち奥に移動するよ。」

と言うと、再び女の子にお得意の笑顔を向けた。
「ち…違うんです。すいません。すぐに席に戻ります~。」

女の子は、周りをキョロキョロしながら戻って行った。


「あまりうちの客を苛めないでくれよ」

女の子が席に着いたのを見計らってマスターがグラスを持ってきた。


「どうせすぐにケロッとして他の席に行くよ。」
トオは咎められ少し拗ねて後ろを振り向きながら言った。


そこで、トオが少し止まった気がした。

「どうかした?」

「いや…何もないよ…」
トオは、座り直したけど、何か気になってさっきトオが見ていた先を見渡した。


「え…」

「たっくん。」

「…。」

僕の目に映りこんだものをただみていた。


「やっぱり藍ちゃんかな…?」


トオの言葉に、僕は引き戻された。


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