ゆびきり
藍ちゃんは、奥の座席に座っていた。

こんな偶然ありか?
こんなにたくさん店があるのに、何でたまたま会う?

ミニスカートに白のパンプス。短めのジャケットからは胸元がのぞいている。
そんな格好の藍ちゃんの周りには、僕とそう変わらない男と年配のオヤジ達が座っている。


藍ちゃんは笑っている。

若い男が腰に手を回して胸の膨らみに手を伸ばしているのに。


藍ちゃんは笑っている。

若い男の右手はミニスカートから出た足を触っているのに…。


周りとの感じを見ても、2人は恋人のように見えた。


「どうかした?」

マスターの声とともに
出されたシングルモルトの氷がグラスにあたる音がした。


「いや…何でもありません。知り合いかと思ったのですが、別人でした。」

僕はそう言うと席をたった。


「トオ、悪いけどちょっと出ようか。」

「う…うん。」

明らかにトオの笑顔がひきつっていた。


あれは、藍ちゃんだ。
間違いない。

「いいのか?」

「仕事で来てるだけかもしれないし。また聞いてみる」

お金を払いながらもう一度藍ちゃんの方を見た。


一瞬目があった。

でも僕は目をそらし、お釣を受け取り店をでた。

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