ゆびきり
藍ちゃんの足音が雨に近付く…

「濡れるから来ないで。」

僕はやっと振り向くことが出来た。


「たっちゃん…藍は言ってなかったことがあるの。」


これから何の言葉が続くか想像つかなくて
怖くて手に力がこもる。


雨はいっそうキツく降って身体に痛みを感じるほどだ。


「たっちゃん…藍…事務の仕事してるなんて嘘なの。」


「え?」

聞き間違い?


「就職はしたけど、すぐ辞めて、でも、ローンあったしお金も無くなるしで…体験で行かないかって友達に誘われて…その…ずっとホステスしてたの…今居たのは店のオーナーとお得意様だよ。」


藍ちゃんが水商売?

男が想像するより、随分簡単に踏み入れるものなんだ。


「何か関係あるのか?その…オーナーと。」

口に出すのは含みをもたせるこの言い方で限界。


否定してくれれば
それでいい。


僕は藍ちゃんをすべて受け入れる。


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