ゆびきり
「付き合ってないよ。でも何も関係が無いわけじゃない。」


どこからか低い男の声が聞こえた。


さっき僕たちが降りてきた階段からだった。


きっとオーナーだ。


華奢な身体に、男らしい顔だちの人だった。

僕よりは年上だ。


「君は藍ちゃんの彼氏だろ?想像以上にカッコいいな。」

「貴方に話はないですが。」


「まぁまぁ、彼女が好きになりそうな男と話くらいしてもいいだろう?」

こっちが雨に濡れてびしょ濡れなのに、涼しい顔をしている。


「夢を現実に変えていく素敵な彼氏が自慢だけじゃ終わらなくなった。彼女は君を横でみて、夢も仕事もない自分を後ろめたく思っていた。」

オーナーは1人話だす。
「何言って…」

「そこに、金の良い仕事が舞い込んで、軽い気持ちで踏み入れる。一度高額な給料を手にしたら、あと少しだけ…と辞める機会を失った。でも警察官の彼氏には言えるハズも無い。」


「オーナー。」

藍ちゃんは止めるように身体に触ったけど
その手を逆に握り締められた。


「ある日、女の子の扱いに慣れたオーナーとお酒を飲みに行く。自然に相談もして、お酒も進み、いつの間にかいいムード。後はわかるよな?」


「だから何なんですか?過ちなら僕は許します。」

藍ちゃん以外なんて僕は考えられないから。


< 242 / 336 >

この作品をシェア

pagetop