ゆびきり
連絡をする気はない

でも、ポイっと捨てるわけにも行かず、とりあえずとっておいた。


「2次試験通ったそうだな」

僕より身体も大きく体格も遥かに良い先輩は、交番に着くなりそう言った。

僕は、いわゆる昇進試験を受けている。
先輩は2次で落ちたらしい。

「はい…次は面接です。」

「俺なんて2回落ちたっていうのに…そういえばT大卒業なんだったな。早く居るべきとこに入れよエリート。」

こちらを見ずに、嫌味な口調でそう言うと、電話の受話器に手をかけた。

「合格すれば…そういう話もうかがってます。」

僕は、笑顔で答えた。


「爽やかな笑顔だな。地域でも評判いいぞ。」

こちらを向いてないから
見ていないと思ったら、しっかり見ているし…

下手な事はしないでおこうと心に決め、業務についた。


そうこうしている間に、ポケットの手紙のことはすっかり忘れていた。


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