ゆびきり
トオと僕は、その後は藍ちゃんの話をすることはなかった。

夜までウロウロ遊んで
バーで2人また酒を飲む。


「たっくんは、ほんと興味ない女の子に冷たい!」

「トオが愛想良過ぎるんだよ。」


お酒をカウンターで飲みながら、今日一日を振り返る。

「楽しそうだね。どうしたの?」

店のマスターが、グラスを拭きながら、興味津津に寄って来た。

「昼間とさっきと3回逆ナンされたんだけどさぁ、たっくん冷たいし、女の子には優しく~って言ってるんですよ。」

トオは氷の入ったグラスを持ちながらマスターに訴えかけた。

「トオみたいに愛想よくニコニコできないし!」
僕は少し強めに反撃。

マスターは拭く手を止め
「君たち2人ともイケメンで目立ちますから。諦めてくださいね。」

そう言うと、目の前のライトの光の中に、そっとグラスを置いた。

ほこり一つ付いてないグラスは、ライトに照らされ輝いて見えた。

マスターは素早くシェイカーを振ると蓋を開けて注ぎ入れる。

最後の一滴を振り入れた時、表面張力が全開になるくらいグラス一杯にカクテルが入った。


「何事も慣れですよ。でもたっくんみたいに一途なのも悪くないですよ。」


「マスター。良い事言う」

「それって俺が遊んでるみたいに聞こえますが?」

トオは少し拗ねてみせた。

それがおかしくて、思わず笑ってしまった。

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