ゆびきり
本署が勤め先になってからは、ずっと忙しい。

トオとの約束を果たせたのは、この電話から1ヶ月を過ぎた頃だった。


「では、片平さん、お先に失礼します。お疲れ様でした。」

「おぅ。明日ゆっくり休めよ。お疲れー!」

僕は先輩の片平さんに挨拶をして、外に出た。


額にポツリと何かがあたった。

手のひらを上にして、手を前に出して、上を見上げた。

空からたくさんの水滴が落ちて来るのが見えた。

「雨かぁ…ツイてないなぁ。」

これじゃ近くのコンビニまで走っても、びしょ濡れまでいかなくても、セットした髪は間違いなくて崩れるなぁ…

少し憂鬱に感じつつ、コンビニまで走る決意を固めたとき

「あの…これよかったらつかって下さい。」

と後ろから声を掛けられた。


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