ゆびきり
「からかってないょ。お礼言っただけ。」

声のした方向を見ると、トオが傘をさして立っていた。

「雨降ったから迎えにきたんだ。せっかくだけど傘返したら?」

そう言って、傘を差し出した。

「ありがとう。」

僕が傘を受け取ろうとすると、トオはサッと傘を持った手を引いた。

「?」

トオの顔を見上げると
「俺には手を握ってお礼言ってくれないの?」

と笑っていた。


こいつ…


ムカついたので、さっきしたように両手でトオの手をつつみこみ

「助かります。ありがとう。」

と笑顔で言ってやった。

「ヤバイちょっとドキッとした。」

「バカ。」


僕は、傘を受け取って、まだ立ち尽くしている女の子に傘を返して、トオの傘をさした。


「じゃあ、行きますか。」

雨が憂鬱に感じるくらい降って居るのに、トオはとても嬉しそうに笑った。


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