ゆびきり
「早く…」

「え?」

「早く彼女のところへ!」

美智さんは、僕の腕を掴んだ。


「でも…きっぱりフラれてるんですよ…ずっと会ってないし今さら…」


僕には

空っぽだった指輪の箱の意味も

そこに代わりに入っていた紙の意味も

全く理解出来なかった。

もしも

もしも、美智さんが届けてくれたあの日に見ていたら…

僕は迷いなんて捨てて、藍ちゃんを抱き締められたのに。




「今頃みるなんて…」

奥から、熱いものが込み上げる。


押さえきれない。


それは後悔からか、自分への怒りからなのかわからなかった。


でも、僕の中の熱いものは、涙に変わって出てきた。



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