ゆびきり
僕の中のほんの少しの期待は、無惨にも打ち砕かれた。

「そうよ。」

という返事によって。

「怪我したの?」

すごく大声で言ったと思う。

でも周りの慌ただしさで、そんなに目立たなかった。

「分からないのよ。連絡が取れなくて…でも、乗ったのは確かみたい。」

「そんな…」

電話口からは何か聞こえていたけれど、僕は携帯を持った手をダランと下げた。


下げたその手に何かがあたった。

見るとそれは、さっきポケットに入れた指輪の箱。


「藍ちゃん…。」

足は勝手に走り出していた。

事故現場まではけっこう距離があるけど、途中でタクシーを拾えば良い。
人混みの中、すれ違う人に肩をぶつけながら
とにかく駅を離れた。

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