ゆびきり
タクシーはなかなかつかまらなかった。

僕は、ひたすら走った。

藍ちゃん…

もう会えないなんて…

そんなのは嫌だよ。


僕は走りながら、小さい時に、かくれんぼで、藍ちゃんがいなくなった時の事を思い出した。


気持ちがあの頃とシンクロして、不安が僕の中に渦巻いた。


でも、最近の藍ちゃんを思い浮かべることは出来なかった。


今走って向かってるのは…間違いじゃないよね?

現場に向かったら、僕と同じ様に、顔の青ざめた今の恋人が、必死で藍ちゃんを探してたりしないよね?


さっきまでの気持ちを地面に落としてしまったかの様に、僕は足を止めて、ジッと自分の足下を見つめた。


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