ゆびきり
「おいおい!藍ちゃんが告白されてるぞ!!」

タケが隣のクラスから駆け込んできた。

暑い気温のせいか
走ってきたせいか
タケの額からは汗が流れていた。


「誰に?」

僕が窓を向いたまま答えると

「ちょっとは心配しろよ。相手はアノ滝川先輩だぞ。」

タケは僕の肩を掴んだ。



タケに促がされて
廊下から中庭に降りる階段を見た。


僕は滝川先輩と言われても
誰だかわからなかったけど
階段に藍ちゃんと立っているのがそうなんだろう。



確かにカッコいいかな。
でも、ちょっと遠くてよく見えない。


藍ちゃんは何かを言って
滝川先輩にペコリとお辞儀すると
走って教室の方へ行った。



「さすがの藍ちゃんもちょっと照れてたよな?」

タケがニヤニヤしながら
僕に同意を求める。



「そうか?良く見えなかったけど…」

相手が誰であろうと
藍ちゃんは断っただろうし
僕は大して気にしていなかった。


「よく冷静でいられるよな。俺なら心配で仕方ないけど」

同意を得られなかったタケは
つまらなさそうに僕の肩をポンと叩いた。


タケは、もてないキャラを貫いていたけど
成績もスポーツも僕と同じくらいのレベルだったし
本当のところ女子からも人気があった。


僕はタケがなんでいつも自信がないのか
そちらの方が不思議でならなかった。



「あ!藍ちゃん!こっちこっち!彼氏が心配してるよ!」

タケは、大きく手を振って藍ちゃんに向かってそう叫んだ。





こ・・・こいつ・・・・・・・。









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