ばーか。
花歩side



お昼を告げるチャイムがなる。

胸が苦しくなる。



…目の前にいるのに。
こんなに近いのに。


あたしが自分のほんとのキモチに気付いちゃったから、

一番近くて一番遠い
そんな…存在になろうとしてる。

…ううん、

もう、なっちゃった。




「花歩」
「奈津、あたし…行く」
「…うん。頑張って」
「ありがと…」


こわい。
知りたくないこと、知っちゃうかもしれない。

もしかしたら
明里ちゃんと、
いるかもしれない。

…そもそも、
来てないかもしれない。


でも
いくら考えても答えは出ないんだ。


あたしが、
歩かないとだめなんだ。





階段をのぼる。

鼓動が高鳴る。

ドキドキうるさいよ…


何を話そうか。

「どうして話しかけちゃだめなの?」

や…違う

「久しぶり」

違う

「あの…好きなんだけど!」

…違うよ



何を言えばいい?
どんな顔をしたらいい?
わかんない。
わかんないよ…


だけど、
扉はもう目の前。




キィ―




「…あ…」














…やっぱり


来てない、か…
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