【短編】2度目の初恋
世間はバレンタイン一色。


冬は恋人達にとってイベントづくしだ。
私のバイト先でもバレンタインまでの限定メニューなどを作っており、毎日結構な量が注文される。
人間は『限定』という言葉に弱いらしい。



休日ということもありカフェは開店からほぼ満席だったが、少しだけ落ち着いてきた昼下がり。
私は大通りに面したテーブルの後片付けをしていた。
外を何気なく見れば、カップル、カップル、カップル。
寒さもあってか、体をぴったりくっつけているのがほとんどだ。

…げんなりする。

食器を下げようと動き出そうとする。
ほら、今まさに店内に入ろうとしているカップルも腕組んでるし…
入り口からは遠かったので、そのまま厨房に行こうとした。



…え?



チャリンチャリーン

入り口のドアに掛けてある鈴が鳴る。
入ってきたのは、先日も同じような光景を見たことのある一組のカップル。
前は偶然会ったのかもしれないが、今回ははっきり、腕を組んでいる。


…やっぱり。


バラバラだった線が一本に繋がる気がした。

彼女の方はとても楽しそうに、彼の方は引っ張られている感じだった。
そのカップルは私がさっきまで片付けていた、端のテーブルに案内された。


見つからないように早足で厨房に入る。


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