【短編】2度目の初恋
進藤と美咲


やり直したなら、言ってくれてもよかったのに。

そうすればあの時も普通に接することが出来たのに。

こんなに悩むことはなかったのに…




「杉村さん?」


前を見ると、すぐそばに同僚の姿があった。


「どうかしたの?」
「あ…ううん…」
「でも顔色悪いよ?休憩入れてないからかな。無理しないでね?もうすぐ交代出来ると思うし」
「うん…」
「本当に大丈夫?」


普段は比較的明るい私が静かなのが気になったのか、バイト仲間はすごく心配してくれた。
「接客はフォローするから、無理せず呼んでね」と言ってくれたその気持ちが、今の私には有り難い。

今は、あの二人を見たくない…




「以上でよろしいでしょうか?」


追加オーダーを頼まれたお客様のところに注文を取りに行く。
なるべく彼等の席の方には同僚に行ってもらい、近づかないように仕事をこなす。


「すみませーん」


意識をすると、こうもタイミング悪く呼ばれてしまうのか。
自分の運の無さにため息が出る。


「…少々お待ちください」


声をかけ、同僚を探す。


「31番テーブル、お願いします」
「はーい」


堂々と注文を取りにいけない申し訳なさで、同僚に軽く会釈する。
すれ違い様に耳打ちされた。


「休憩入っていいよ」
「ありがと」


そのまま伝票と一緒に厨房に引っ込む。


< 28 / 57 >

この作品をシェア

pagetop