【短編】2度目の初恋
もう辺りは真っ暗になっていた。
私の家の近所にある、この辺では一番大きな公園。
そこが待ち合わせ場所に指定された。



時間は決めていなかった。

電話を切り、すぐに出かける仕度をし、家を出る。
絶対私の方が距離的にも先に着いていると思っていたのに、彼はベンチに腰掛け、私が来るのを待っていた。


「こんばんは」


努めて明るく挨拶する。
彼はその声で私が来たことに気がついたのか、顔を上げ、目を細めた。


「…早かったな」
「進藤こそ」


彼の家からここまでそんなに早く来れるとは思えない。
バイクを使ったとしても10分はかかるだろう。


「杉村に電話した時…ここにいたから」


少し照れくさそうに、そっぽを向く。

ということは、最低でも15分前からずっとここにいたわけで…




彼に近づき、両頬に手を当てる。


「つめたい…」


一瞬目を見開き、身体を強張らせる。

その初々しい反応に笑みがこぼれた。


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