【短編】2度目の初恋
座ったままの彼と、立ったまま彼の頬を温めている私。

しばらくそのままじっとしていると、ぽつりぽつり、彼が話し始めた。


「初恋…だったんだ…」




小学三年生。
新しいクラスにわくわくしていた。
今年もはちゃめちゃに楽しく過ごせたらいい。
そんな期待があった。



自分の席を確認し、席に着く。
少し大きくなった机に見とれていた時。


「おなまえは?」


隣から声がした。
たぶん出席番号が同じ女子だろう。
そう思って、声のした方に顔を向けた。



一目惚れだった。



後ろからハンマーでガツンと殴られたような衝撃。

瞬間、世界が目の前の女の子しか見えなくなった。


「わたし、杉村愛菜。よろしくね!」


小さな手を差し出しながら、その子はこちらに笑顔を向ける。
その手に自分の手を重ねると、とても嬉しそうに笑ってくれた。


今日からこの子が隣の席なんだ。

初めて芽生えたその感情の名前など知らない。



ただ、この子が隣にいる。



それだけで十分だった。


< 43 / 57 >

この作品をシェア

pagetop