【短編】2度目の初恋
見回りの先生が来てその日はそこまででお開き。
家に帰ってからずっと今後の対策を夜通し考えていた。

うーん…

他の子は好きな子にどんな対応をしているんだろう…



そして日頃の行いの悪さを恨む時が来た。




「進藤がわたしをすきだなんて、しんじられない」


そんな日に限って寝坊した。
いつもは一番にあの子の顔が見たくて早起きして登校するのだが、昨日の夜はいつもは使わない頭をめいっぱい使ったせいで寝不足もあった。

一瞬幻聴かと思った。

だが、目の前に広がる光景。
人だかりの中心にいるのは、自分の隣の席の女の子。
そしていつも一言も漏らさずに聞いていた子供独特のソプラノ声。


その彼女に群がっていたクラスメイト達は、噂の人物を教室入り口に見つけた途端、一斉に自分の席に着いた。
残ったのはその中心にいた彼女一人。



どう、言葉をかければいいのか。


これはいわゆる“失恋”というものを体験したことになるのだろうか…?



意外に冷静に理解する。
とりあえず椅子に腰掛けチラリと隣を見るが、表情は顔を伏せ髪の毛で遮られて見えなかった。




そして四年生の終業式。
五年生になればまたクラス替えがある。
もう、一緒のクラスになれないかもしれない。
そう思い、想い人を呼び出した。


「おれ…さ。杉村のこと…すき…」

「………」

「…だったんだ」


なぜか過去形で伝えてしまった。


だからなんだというんだ。
その後相手も黙ったまま、結局なにがしたかったのかよくわからないことになってしまった。


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