【短編】2度目の初恋
それからまったく話すことがなくなった。


クラスも一緒になることがなくなり、自分からもどう切り出したものかと色々試行錯誤するが、あと一歩が踏み出せないでいる。
そうしている間にも月日は流れ、結局会話した記憶は喧嘩をしたことしかない。

その後中学校でも一緒のクラスになることはなく、出会うこともなかった。



美咲とは別れてからも交流があり、色々相談も乗ってもらっていた。
なので自然と杉村の交友関係は知ることになる。
一番交際期間が長かった『先輩と別れた』と聞いた時は、本当に嬉しかった。

その当時、自分も彼女がいたのに…




そして成人式の日。
“初恋の相手”を見かけた時は、胸が躍る思いだった。
どうしても連絡先が知りたくて、後をつける。


目の前には、忘れたくても忘れられなかった想い人。

きちんと気持ちを伝えたことがない。

正式には、振られてもいない。


だからずっと気になっていたのかもしれない。
それでも今までつき合ってきた女性には感じなかった“なにか”が蘇る。



ほぼ毎日、連絡をし続けた。
今までつき合った子には自分から連絡したことはほとんどなかったのに、彼女には進んで連絡を取る。

返事がくるのが待ち遠しい。

声を聞くと、安らげた。



なのに。



電話やメールでは普通に話せるのに、どうして本人を前にすると何も出来なくなってしまうのか。


せっかくデートに誘ってもまったくもって意味がない。
彼女はなんだか居心地悪そうで、そうさせてしまっている自分に腹が立つ。


ただ、会いたかった。

それだけなのに。


しかしつらそうな顔をさせているのは自分で、なんとかしたいのに、打開策がまったく思いつかない。


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