【短編】2度目の初恋
気づけば彼の服の裾を掴んでいた。


「…なに?」
「………」


なんで、なにも言わない。

ここで言わなければもう二度と言い出せない。

そんなことはわかっているのに、声が出ない。



いつもそうだ。
肝心なことを言えず、後悔ばかり。
普段は偉そうなことをばんばん言えるのに、一番伝えたいことは胸にしまったまま…




何分くらいそうしていただろうか。
その間何も言わず、ずっと立ったまま。
唯一繋がっているのは、私が掴んだ彼の服。
下を向いて何も言わない私を、黙って待っていてくれる。


どれだけ私は彼を待たせたのだろうか。

いつも待たせてばかり…



「小3のときね…」


彼の話を聞いて真っ白だった記憶が徐々に思い出され、思い出した記憶の欠片から話し出す。


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