【短編】2度目の初恋
成人式。
中庭で声をかけられた時は、本当に驚いた。


“一目見れればいい”


そう思っていたから。
声を聞けた上に連絡先まで交換し、夢のようだった。
メールや電話を繰り返し、デートも出来た。



これで忘れられる


思い出が出来た



そう思っていた。
だが、元彼女といるところを見、欲が深くなっていることを知る。


『わたしだけをみてほしい』


そんな気持ちに気づいてしまった。





「ごめんなさい…」



たくさん無視したのに


たくさん傷つけたのに


私には、そんな資格ないのに…



気づけば身体は彼のコートの中。
頬を伝う雫を指で拭ってくれる。


「泣かないで」
「…泣いてない」
「ぷっ、強情だな」


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