【短編】2度目の初恋
外は寒くて、今にも雪が降り出しそうだ。
でも彼の腕の中はとても温かくて、心も満たされる。


「…11年越し」


彼の顔が近くなる。
耳元で囁かれる声が優しい。
背中に手を回せば、抱きしめてくれる力が強くなった。


「好き」


甘い囁き


好きな人に言われるのがこんなに嬉しいなんて。
なんだか照れくさくって、彼の身体に顔を埋める。


「あれ?無反応?」
「………」
「あんなに熱烈な告白してくれたのに」
「う…」
「昔はかなりやんちゃだったよなぁ」
「それは…」


耐え切れず顔を上げると、軽く、触れるだけのキスをされた。


「今も昔も好きだよ?」


いたずらを思いついたかのように笑う顔が憎めしい。
悔しいので離れようとするが、背中に回った腕がそうさせてくれない。


「散々待ったし、もう逃がさない」
「…ずるい」


力で勝てるはずがないであろう。


非難の目を向けると、楽しそうにくすっ、と笑う。


< 54 / 57 >

この作品をシェア

pagetop