束縛女 *短編*
「……佑衣……」



外に出た瞬間、冷たい風が吹いたと同時に
晃くんに抱きしめられた。
でも晃くんに抱きしめられたら、
体中が温かくなっていくのが分かる。
晃くんの香水の匂いがする。

晃くんに抱きしめられると、
やっぱり苦しくなる。

二通りの、苦しい。



「愛してる」

「あたしも」

「佑衣も言って?」

「っ……愛し、てる……」

「いい子」



好きでもない人に
こんなにも愛されて、付き合ってしまう。

だけど晃くんに頭を撫でられて、
気分が楽になった。



「……また明日な」

「うん。おやすみ……」



晃くんはそう言って
あたしから離れると、
優しくキスをしてくれた。

これから好きになってくから。
それまで少し待って。


そう誓って、
あたしは家の中へと入った。

寝ようとした時、
晃くんから一通のメールが届いた。

“大好きだよ佑衣”

それだけだった。

好きが増えた気がする。



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