束縛女 *短編*
「……俺ら、付き合ってんだよな?」

「うん……」

「……佑衣……他の奴んとこ行くなよ」

「行かないよ……」



今は晃くんが本当に好きなわけじゃないから、
こんな返事しかできないけど。

きっともっともっと大好きになったら、
「晃くんも行かないで」なんて言ってただろうな。

なんであたし、こんなに
晃くんにパッとしないんだろう。
告白されたら好きになっちゃうタイプのあたしなのに。



「イメチェンしたの? 佑衣。
どっちも可愛い」

「っ――」



顔がみるみる赤くなってくのが、
自分でも分かる。



「佑衣……」



晃くんから抱きしめられる力が強くなる。
それだけ愛されてるっていうのが分かる。

だけどあたしは……

こんな曖昧な気持ちで付き合って。
バカみたい。

言葉にしたらあたし、
晃くんのこと好きになれる?
大好きになれる?



「……好き」



そう独り言のように呟いたのに、
晃くんはしっかりと聞きとってくれてて
「俺も好き」と言ってくれた。

もう嘘はつけない。
あたしは好きって言ってしまったから。
付き合ったこと自体で……もう嘘はつけないんだ。
あたしが晃くんをちゃんと好きだって、
晃くんもそう思ってるはず。

だから……あたしはそう“ならなきゃ”いけないんだ。



「行こっか」

「うん……」




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