ヒロイン 完
「そんなことより……」



そんなことって、まっちゃんから聞いてきたんじゃないか。


しかも質問の意図が不明なんですけど。



「お前、何か俺に用あったんじゃないのか?」



あー、そうだった。



「あのさ、ほのかちゃんと颯太君。教室に残って勉強してるから見てあげて?」


「……」



教師があからさまに面倒臭そうな顔すんな。



「しょーがねーなー」



とか言いながら残りのコーヒーを飲み干して腰を上げる。


そしてポッケに手を突っ込みながら職員室の扉に向かった。


私は、まっちゃんの背を見つめた。


んー、まっちゃんって全然32歳に見えない。


イケメンだよね。


そんな事を思っていたら、いきなり振り向いた。



「神山、お前さ……」


『……』



私は、まっちゃんを見ながら小さく首を傾げた。



「あー、お前は勉強見てやんなくて良いんか?」


「……」



今、絶対違うこと言おうとしたよね。


でも……。



「ご心配なくー」



面倒だから突っ込まないでおいた。



「あっそ、気ぃ付けて帰れよー」



背を向け手を振った、まっちゃんは職員室から出て行った。



「……」



まっちゃんの居なくなった職員室をぐるりと見渡す。


うん、視線痛すぎだよね。帰ろ。


私は「失礼しましたー」って呟きながら魔の巣窟を後にした。
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