ヒロイン 完
「ちょっと奈緒。あんた勉強しなくていいの?」



は、何?



「いつまでテレビ見てんのよ」



母だ。母が何か言ってる。


さらに溜め息を零した母にイラッとした。


お前に言われたくない。



「お母さんに関係ないでしょ」



私はキッチンに立つ母を見もせず言った。



「何であんたは、そんな口の聞き方しかできないの」


「うるさいなー」



若干キレた。



「お母さんが勉強してるわけじゃないじゃん!そんなに勉強しろしろ言うなら自分ですれば!」



若干じゃなかった。


私は他にも色々まくし立て……。



「まじうざい。死ねば」



と言って部屋に引きこもった。


あー、うざい。


心にわだかまりができた。


母にあんなことを言った罪悪感?


違う。


虚しさだ。


虚しい。


こういう日は余計に自分が独りだと思わされる。


涙が出てくる。


何が悔しいのか分からないけど歯を食いしばり涙が溜まってくるんだ。


私は布団に潜る。


そして静かに涙を流す。


虚しい。


こんな時、話を聞いてくれる人も、慰めてくれる人も、抱き締めてくれ人もいない。


私の傍にいてくれる人なんかいないんだ。


虚しい。


悲しい。


痛い。


痛い。


痛い。


胸が苦しい。


寂しい。
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