ヒロイン 完
「朱吏が奈緒ちゃん気に入ったの分かる気がする」



私、気に入られたんすか?大分迷惑ですが……。


てかさ、私を気に入ったのって……。



「あの子に似てるからでしょ?」


「え、」



そうだよ。私とあの子は同じ世界にいた。いたはずだった。


今は違う。


今あの子は笑ってる。あっさり、この世界から抜け出した。


私は、まだ抜け出せないのに。私は、まだ……。



「奈緒ちゃん」


「気を付けた方が良い」


「え、」


「恭二から聞いてない?」


「……何を?」



幸大くんは眉間に皺を寄せた。その瞳は警戒の色に染まる。見えない壁が一瞬にしてできたんだ。


あぁ、やっぱりこの人も愚連隊。



「私、あの子が、木村千夏が大嫌い」



あー、なんてこの世界は息苦しいんだろう。


なんて居心地が良いんだろう
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