ヒロイン 完
着付けも終わりメイク直しをしているほのか待ち。私は鏡で自分の姿を眺めていた。


舞妓さんというより七五三?顔も白く塗らないでもらったし、ただ着物着たって感じだ。



「ほのかは何で、うちみたいな高校来たの?」



千夏がほのかのメイクしている手元を見つめながら問い掛けた。


確かに。うちの学校は、あの地域じゃ有名だが、お世辞にも良い学校とは言えない。


時代錯誤の暴走族がいるぐらいだし。


学力だって中の下ぐらいじゃない?特進クラスは別として。


でも私だったら今の質問はしない。現に思ったがしなかった。誰にだって事情はあるんだから。


そう思っていたのは、どうやら私の考え過ぎだったみたい。


ほのかはあっさり喋った。


「紫がいるからだよ」



あ、やばい。



「紫ね、本当はもっと上の高校行けたんだ」



やばいやばいやばい。


私の中で危険信号が鳴り響く。



「でも、私馬鹿じゃん?」



ほのかは自嘲気味に笑った。


あー、来る。



「紫、私と同じ学校が良いってギリギリまでレベル下げてくれたの」



きちゃった。私の醜い感情の波が……。



「まー、うちの学校って特進クラスは本当にレベル高いしさ」


「そっか」



千夏が優しく微笑んだ。


きっと今、あの子は虎さんのことを想っているんだね。


何で私は笑ってないんだろう。


引きつった頬が痛いよ。
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