ヒロイン 完
ほのかのメイク直しも終わり、まっちゃんと颯太くんが待つフロアへ下りていく。



『おぉおおおおお!!』



うるさい。


男共の雄叫びにも似た声に私は思わず顔をしかめた。


いつの間にやら虎さん達も到着したみたいだし。



「神山、馬にも衣装だな」



颯太くん、どや顔されても全然ダメだよ。



「マメシバ、馬じゃなくて馬子だから」


「は?孫?」



分からないのか。そうか、マメシバ人間じゃないもんね柴犬だもんね。



―――――― カシャ



へ?


明らかなシャッター音に素早く、光と音のした方へ振り向く。



「……まっちゃん?」



そこには私に携帯を向けた、まっちゃんがいました。


うん、今絶対撮ったね。盗撮だよね。


別に私は何も言わないよ?だって言ったって、まっちゃんが消去するわけないし。


ただ、冷たい視線は送り続けるけどね。



「気にすんな神山。いつもよりは細く可愛く撮れたぜ」



うざい。



「まっちゃん、うざい」



心の声が外に飛び出し、その思いが下駄で足を踏むという行動で表れた。
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