ヒロイン 完
騒ぎを聞きつけたのか、倉庫の奥から現れた見覚えのある人達。


恭二、紫くん、ほのかちゃん。


よく見れば、その後ろには整った顔立ちをしたヤンキーが二人ほどいた。


冷静になって辺りを見渡せば倉庫の隅で焦った顔をしている颯太もいた。



「おい、どういうことだ蓮」



低い声に誰だろうと思えば朱吏さんだった。



「何でちーじゃななくて、その子を迎えに行った?」



その子?



「……」



あぁ、そっか。私が、あの子をあの子と言うように、彼らにとって私は“あの子”なんだ。


ここには、こんなにも人間がいるのに、私は独りぼっちなんだ。



「おい、お前何考えてる」



何って虎さん。今あなたが気にするのは私じゃなくて、あの子でしょ。



「蓮さん。私、帰ります」


「あ?」



私は踵を返し、その場から離れようと足を踏み出した。が、それは阻まれた。



「蓮さん?」



虎さんが私の腕を掴んで放さなかった。


あぁ、今ので絶体誤解が深まった。


私は、うなだれた。
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