ヒロイン 完
「あれ?朱吏さんに蓮さんじゃないっすか」



灰色の浴衣を着た男の子が彼等に気付き、近くにいた男子に飲み物を持って来るように頼んだ。


え。



「お、颯太じゃん」



紅髪おにーさんが親しい感じで声をかけた。



「お前何だ、その格好」



続いて虎も……。


あ、初めて声聞いたかも。



「えへへ、似合いますでしょ?」



颯太くんが嬉しそうに笑った。



嘘でしょ?まさか……。



「颯太くんも不良だったの?」



私の呟いた声で一斉に視線が注がれた。



――――― ビクッ



「え、神山知らなかったの?」



私の顔を覗き込むように近付いて来た颯太君に反射的に一歩後退った。



「神山?」


「奈緒ちゃん?」



不思議そうに首を傾げた颯太君と紅髪おにーさん。


虎も無言で私を見つめている。


う、嫌だ。


逃げたい。


怖い。


不良は嫌い。
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