ヒロイン 完
「あー、ばいばい」



私は引きつった笑みを浮かべて速攻この空間から逃げ出した。


やだ、やだ、やだ。


まさか颯太くんまで不良だったなんて……。


世も末だ。


しかも虎さん達と仲が良いってことは黄龍なんでしよ?


暴走族なんでしょ?



「最悪」


「なーにが最悪なの?」



私はいつの間にか人道りの少ない渡り廊下まで来ていた。


そして目の前には不良が三人。


もー、いい加減にして。



「浴衣着てんじゃん」


「かーわい。浴衣ってことは二年のコスプレ喫茶の子?」



何?


私この人達の相手しなきゃいけないの?



「あれー?俺この子どっかで見たことあるー」



そう言って茶髪のおにーさんが顔を無駄に近付けてきた。


不良って顔近付けるのが趣味なんですか?


さすがに慣れた。


慣れって怖いねー。



「あ、思い出した!この子、今年の有名人ちゃんだ!」


「てことは、まっちゃんの女?」



三人は顔を見合わせ卑しい笑みを浮かべた。


やばい。



「まっちゃんの女に手ぇ出したら、どーなんのかな?」



どーにもなんないし。


てか、私まっちゃんの女じゃないし。



「やってみる価値あんじゃね?」



ない。


どう考えてもない。



「楽しそうじゃん?ヤッちゃう?」



本気なのか冗談なのか分からない笑みに背筋が凍った。
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