ヒロイン 完
あー、行ってしまう唯一の救いが……。


えーっと、メリット?得?


いったい平々凡々で何の特技もない私に何ができる?


私が、ない頭を必死に捻って考えている間に男達の手が再び私に伸びていた。


怖くて怖くて気持ち悪いけど、今は虎さんに助けてもらう為に思考を集中させた。


でもそれは男達の手の感触を、よりリアルにさせた。


そして思い浮かんだのは木村千夏の顔だった。



「あ、あるっ!」



既に小さくなった虎の背に向かって震える声で叫んだ。


虎は立ち止まると、ゆっくり振り向いた。



「ある!てか、あった!」



無言で私を観る虎。



「私、助けた!ギャル子達にリンチされてる千夏ちゃん助けた!」



微かに、でも確かに虎が反応した。



「自分の彼女助けた恩人を見殺しにするのか!」



自分でも理不尽(?)だと思うが私には、もうこれしかなかった。


両手を男達に押さえられ唇を噛み締めながら睨み付ける私に虎は変わらぬ歩調で近付いて来て……男達を見た。



「な、なんだよ」



勇気ある馬鹿男が虎さんを怯える目で睨んだ。



「その女、離せ」



虎さんの放たれた地を這う低い声に男共は情け無い声を発して腰を抜かした。


そして私も力が抜けたように、その場に崩れ落ちた。


手が体が震えている。


両手で祈るように握り締めたドッグタグは爪が食い込むほどの力を込めていた。


浴衣は着崩れし、胸元は大きく開き太ももが露わになっていた。


男達に触れられていた恐怖が襲いかかる。


最悪だ。


私は頭を抱え、うなだれていたため虎が誰かに連絡を入れていたことに気付かなかった。
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