ヒロイン 完
私は慌てて胸元を手繰り寄せた。



「お、お見苦しいものを……」



今や私の顔は真っ赤になり、恥ずかしすぎて俯いた。



「いえいえ、むしろ光栄だよ」



は?泉さんが何てことを……聞き間違い?



「奈緒ちゃん声に出てる」


「わっ」



私は慌てて両手で口を塞いだ。



「奈緒ちゃん。俺も一応、男の子だからね」



私は口を抑えたままコクコクと頷いた。



「着崩れ直してあげる」



そう言って腕を掴み私を立たせ、胸元に手を掛けた。



――――― ビクッ



「大丈夫」



体を強ばらせた私に彼は優しい笑みをくれた。



「ありがとうございます。泉さん上手ですね」


「脱がせた後、着せなきゃだからねー。昔、練習したんだ。まぁ、俺は脱がせる方が好きだし得意なんだけど」


「……」


「ハハッ……冗談だよ」



泉さん冗談に聞こえません。



「それはそーと泉さん。何で学校に?」


「遊びに来たんだよ」



ふーん、誰か知り合いでもいるのかな。



「それと……」



泉さんは意味深に口元を上げながら私の頬に触れた。



「奈緒ちゃんを殴った奴に仕返ししようと思って」



笑顔なのに目が笑っていない彼に、ぞぞぞっと寒気がした。
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