ヒロイン 完
「お、遅くなりました」


「大丈夫だよー………」



泉さんの言葉が詰まった。


私が訳が分からず首を傾げると彼はコーヒーカップを置いてソファーから立ち上がった。


静かに近付いて来る泉さん。


微妙に眉間に皺が寄っているような…。



「泉さん?」



彼の手が私の胸元に延びる。



――――――ドキッ



咄嗟に固く瞼を閉じると、ちょっと拗ねたような声が降ってきた。



「ボタン開けすぎ」


「あ…え………」



自分の胸元を見ると泉さんがボタンを閉めてくれていた。



「い、急いでて…」


「四つも開いてたら丸見えだよ」



私は顔を真っ赤にして俯いた。



「申し訳ないです、またまたお見苦しいものを…」


「だからね、見苦しくわないんだけどね、俺も男の子だからね」


「はい、すみません…」


「奈緒ちゃんって、いつもこうなの?」


「いえ!全然!」



疑わしげな視線を送られてしまった。



ガーーーン



「嘘だよ、コーヒー冷めちゃう」


「はい…」



肩を落とした私の頭を優しく撫でてくれた。


泉さんってSかも…。
< 94 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop