Love Story【番外編集】
“どうしてなんですか?”
私が唐突に疑問の意を示すものだから、彼は訳が分からず黙って眉間に皺を寄せた。
「あなたは“女は喫煙すべきじゃない”なんて陳腐なことを言うようには見えない。というより、他人に干渉なんてしない人間でしょう?」
――きっと、私と同じ種類の人間。
“そんなあなたが、あの娘を縛るなんて意外すぎるわ”
男はいまだ、なにも答えない。
ただ静かに紫煙を吐き出すだけ。
いや、むしろ、“なにも答えない”ことを肯定と取るべきなのか。
「―――美しすぎるだろ?」
とても簡単には理解できないような言葉を吐き出して、またあの不敵なにやつき顔を見せる。
“美しすぎる”?なにが?
「火を点けたりだとか、それを燻らしたりだとか、指にはさんだまま足を組みかえたりだとか?そういうあいつの仕草、ぜんぶ」
“あれにそそられない男はいないだろ”
全くのろけとしか受け取れない言葉を、涼しい顔して平然と言ってのける。
あの娘が執着し続けていた理由が、少し(本当に少し)分かった気がする。
この男はこうやって女を骨抜きにするのだ。
「俺以外にあれに惑わされるやつがいるかと思ったら、気に入らなくて」
「嫉妬?それとも独占欲?」
「どっちでもない。敢えて言うなら同情、かな」
“あれに惑わされる不幸な男は、俺一人で十分だ”
よく言う。
散々放置してきたじゃないの。
だいたい、どこが“不幸”?
彼のその表情は、どう見ても“その逆”にしか見えない。