Love Story【番外編集】
ようやく想いが通じ合った今、以前のように泣くことはないかもしれないが、先のことなんて分からない。
また別のことで泣かされる羽目になるかもしれない。
そうなったとしても、酒を交わしながら愚痴を聞いてやることすら難しくなる。
だから。
「へぇ、見かけによらずイイコなんだな」
そう言ってにやつくこの男を怒鳴りつけたい気持ちをどうにか抑える。
だめだ、場所を弁えろ自分。
友達想いだねぇ、と尚もおもしろそうに言う彼が不意に沈黙した。
「ま、少なくとも手放すつもりはないから安心してよ。一生、な」
その言葉を聞いて咄嗟に彼の方に目をやったが、すでに後ろでに軽く手を上げて店から立ち去ろうとしていた。
私の分の会計までしっかりと済ませて。
なるほど。
たしかに極上の男である。
散々紆余曲折したふたりは今きっと最高に幸福で。
くやしいから、やっぱり先程の言葉はあの子に伝えてやらないことにする。
向こうでの生活が落ち着いたら式を上げると言っていたから、どうせならそのときに伝えてやるのもおもしろいかもしれない。
きっと最高に綺麗なドレス姿で。
誰よりも幸せそうに彼女はまた、あの大きな目に涙を浮かべるだろう。
その姿を想像するだけでたのしくて、今から楽しみだ。