桜の花びら舞う頃に
「だいたいエリカは……」


その時、今にも消え入りそうな声が4人の耳に届いた。




「ごめん……なさい……」




「ええっ!?」




一同は驚きの声を上げた。



「エリカ……今……」



訪ねる玲司に、エリカは顔を真っ赤にする。



「お前……今……ごめんって言ったよな……?」



よほど恥ずかしいのだろう、エリカは更に顔を赤らめうつむいた。


「お前が謝ったの……初めて聞いた……」


玲司は驚きを隠せない。


「どうしたんだ? 熱でもあるんじゃないのか?」

「う……うるさいわねっ!」


額を触ろうとした玲司の手を払いのけるエリカ。




「あ……アタシ、ゴメンなんて言ってないわよ!」




エリカは顔を上げ、玲司をにらんだ。


「は? だって……今……お前……」

「うるさい、うるさい、うるさーい!」


玲司の言葉をかき消して、エリカの声が廊下に響き渡る。


「と……とにかく! アタシは悪かったなんて、全っ然思ってないんだからねっ!」


エリカは、一気にまくし立てると


「バカ玲司!」


と、言い残し、その場を走り去った。


残された4人は、思わず呆然と立ち尽くす。




「……」



「……ぷっ」



「……クスクスクス」



「あはははははは!」




1人が笑い我慢できずに吹き出すと、それにつられ残る3人も笑い出した。


「あははははっ! 何、あの子~?」

「素直じゃないよね~! おかし~!」

「顔、すごく真っ赤だった!」

「意外に可愛いとこ、あるんだな~」


文字通り、4人は腹を抱えて笑う。

少し離れたところでは、先ほどの警官が4人に聞こえるように咳払いをしていた。









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