桜の花びら舞う頃に
第24話『カレーライスの女』
拓海の授業参観からひと月が過ぎた。


当時はまだ小学生になりきれていない感のあった拓海も、次第に顔つきが変わってきたように思える。


それは父親として誇らしくもあり、また、少しだけ寂しくもあった。








「た~、そろそろ帰ろうか」


5月最後の日曜日、悠希と拓海は散歩がてら近くの公園に遊びに来ていた。

ブランコに乗ったり、砂遊びをしたり、所狭しと走り回っていた拓海は少しだけ残念そうな顔を見せた。


「少し寒くなってきたしさ」


公園に備え付けてある時計を見上げる。

針は午後4時を指すところだった。



(来たのが昼過ぎだから……3時間は遊んでいたんだな)



「……た~?」


視線を落とすと、唇をとがらせて地面の石を蹴る拓海がいた。



(まだ遊び足らないのか~……)



そんな我が子の様子に、自然と笑みがこぼれる。

うつむく拓海を前に、悠希は大きく息を吸い込んだ。








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