桜の花びら舞う頃に
さくらは、新入生1人1人の顔と名前を確認している。

さくらが名前を呼ぶと、子供たちはみな元気に返事を返し、大きく手を上げる。


「渡辺 耕平くん」

「はいっ!」

「はい、元気な声でいいねぇ。よろしくね」


さくらはニッコリ微笑んだ。

今の児童で、全ての子供たちとの挨拶が終わったさくらは、手にしていた出席簿をパタンと閉じた。



(緊張してる子が多いなぁ……)



子供たちとのやり取りの中、そう感じていたさくらは、子供たちの席と席の間をゆっくりと歩き出した。


「みなさんは、今日から1年生ですね」


子供たちの様子を伺いながら、出来るだけ優しい声を意識するさくら。


「では、1年生になって、立派になったみんなに質問です!」


さくらはポンと手を叩く。


「学校はどういう所だと思いますか?」

「はーい、勉強するところー!」


一番前の席の男の子が元気に答える。

どうやらその子は、緊張していないようだ。

悠希の隣りでは、男の子の答えにウンウンうなずく保護者が1人。


「あれ、うちの子なんですよ」


そうささやく母親に、少々、苦笑いの混じった営業スマイルを返す悠希。


「はい、よくできました!」


さくらは男の子に拍手で答える。

とても嬉しそうな男の子。

もっと嬉しそうなその母親。


「そうですね、学校は勉強するところですね」


さくらは教室の子供たちを見回した。


「……それじゃ、この他にも、学校はこんなところだよって教えてくれる人はいない?」


さくらのお願いのような更なる問いに、きょとんとした顔を返す子供たち。

さくらはぐるりと子供たちを見回す。

今回は自分から答えようとする子はいないようだ。



< 15 / 550 >

この作品をシェア

pagetop