桜の花びら舞う頃に
しようとしたその時、さくらはとびきりの笑顔で悠希にこう言った。





「……ダメよ!」



「……え!?」



「絶対にダメ!!」




力いっぱいの強い拒絶。

悠希は、突然足元が崩れ深い谷底に落ちていくような感覚を覚えていた。




「絶対にダメ!!」




その言葉にショックを隠しきれない悠希。



「……やっぱりダメかぁ」



胸が苦しくて、息が漏れるような声しか出てこなかった。

そんな悠希に、さくらは人差し指を立ててキッパリと言う。




「うん、ダメよぉ。やっぱりカレーはニンニク入れないと!」





(ああ……やっぱりダメか……やはり、ニンニクを入れないと……)





その瞬間、悠希の頭の中に疑問符が映像となって浮かぶ。



「……ん!? ……ニンニク?」


「そうよ、隠し味にニンニクを入れるのよ」



目の前には、得意げな顔のさくらがいた。


ハッと我に返る悠希。


辺りを見回せば、ここは悠希のアパートの食卓ではなく、スーパーの野菜コーナーの一角であった。








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