桜の花びら舞う頃に
悠希の口から、思わず安堵の溜め息が漏れる。



「ふ~、良かった……話がウマすぎると思ったんだ……」



悠希は視線を落とした。



「何がウマすぎるの?」



それを、下から不思議そうな顔で覗き見るさくら。



「うわぁ、何でもない! こっちのこと!」



不意をつかれて悠希は慌てた。


「そ、それより、カレーにニンニク入れるの?」


なんとか話題を変えようと努力する。

悠希の心臓は、また強く早く脈打った。

そんな悠希に、さくらはクスッと笑う。


「ニンニク、入れると美味しいんですよ」


ニンニクの入れ方を、わかりやすく説明するさくら。


「是非試してみて下さいね!」


説明が終わると、「それじゃ」と頭を下げた。


「さくら先生、またね~!」

「うん、た~君。また学校でね」


拓海の頭を2回ほど優しくなでると、さくらは手を振りながら去って行った。


悠希は、その後ろ姿をずっと見送っていた。


さくらがコーナーを曲がり、見えなくなるまでずっと。




「……た~、さくら先生って……素敵な先生だな」


「うん! 僕、大きくなったらお嫁さんにするんだ!」




突然の告白宣言に、悠希の顔に微笑みが戻る。


「あはは、そっか~。倍率高そうだな」


2人は笑いながら、また買い物を始めた。


もちろん、ニンニクはカートの中にしっかりと入れている。



今夜はきっと美味しいカレーが出来ることだろう。



2人の足取りはとても軽やかだった。








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