桜の花びら舞う頃に
第25話『走れ風と共に』
突如、響き渡る女性の悲鳴。


その声を受け、2人は現場へと全力で走った。



「さくらちゃん!」


「さくら先生!」



スーパーの角を曲がる悠希。

少し遅れて続く拓海。


2人の目に飛び込んできた光景は、今、まさにハンドバックを奪われ、地面に倒れるさくらの姿。

そして、さくらのハンドバックを奪い取った勢いで、2、3歩よろけている40代くらいの黒いニット帽の男の姿だった。


周りには買った食材が散乱し、踏みつけられ、さくらが必死に抵抗した様子が伺える。



「さくら先生!!」



拓海が悲鳴に近い声を上げた。

その声に驚いたかのように、ニット帽の男はびくんと体を震わせる。

そして、さくらのバッグを強く抱きしめると、慌ててその場から逃げ出そうとした。




「逃がすかーっ!!」




言うが早いか、悠希は男に向かって駆け出した。

男までの距離は約10メートル。

悠希が全力で走れば、捕まえられない距離ではない。





しかし━━━





「なっ……!?」




悠希は愕然(がくぜん)とした。








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